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「コウさん、マークさん。待ってもらってごめんね」

いくらか時間が経って、セレスへの話(説教?)が終わったらしいテティスがコウのもとへ駆け寄ってきた。

その後ろから、セレスもゆっくり歩いてきている。

テティスに軽く返事をしてから、コウはセレスの方に視線をやる。

セレスのその表情は沈んでいる。だいぶ強く叱られたのだろう。

(まぁ・・・それだけテティスちゃんも心配したってことなんだろうから・・・)


と、コウの視線に気づいたセレスが、コウの前までやってきて、顔を上げてじっとコウの顔を見つめてくる。

(じろじろ見すぎたかな)

そう思ってコウは、とりあえず笑顔でその場をごまかしてみるけれど。

それに対してセレスはというと、変わらずじっとコウの事を見てくるだけで。

言葉も一言も発してこない。

(なんだろう・・・?視線を気にしたわけじゃないのかな・・・??)

セレスの表情を見ると、別に怒っているとか、そういう様子ではないようで。

考えてみてもわからないので、コウは直接訊こうと口を開こうとする。すると。

「・・・あなたは」

「え・・・?」

それよりも先にセレスが口を開いたので、コウは質問のタイミングを失った。

(あなたは?・・・俺?・・・俺は、何だって・・・)

セレスの言葉の続きを、コウは待つ。

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

けれど、セレスは一言言葉を発した後は、何かを考えるようにして下を向いてしまい。

それから黙り込んでしまった。

(どうしたんだ?何を・・・言おうとしたんだ)

言葉の続きが気になるのだけど、いつまでもセレスは黙り込んだままなので。

コウは今度は自分から口を開こうとして―


「おーい、コウー!なにやってんだー。早く出発しよーぜー」

コウ達と離れた場所から、マークのふたりを呼ぶ声が聞こえて、

またコウは、質問のタイミングを失った。

「・・・・・・。悪い、今行くよー!」

なんだかすっきりしないけれど。

(まあ、街に戻るまでにでも、訊くタイミングはあるか・・・)

そう思い直して、コウはマーク達のいるほうに振り向いて返事をしてから、

「・・・俺たちも行こうか」

と、声をかけようともう一度セレスのほうを向く。・・・が、そこには彼の姿は無い。

セレスを捜そうと、コウがあたりを見回すと、

彼がマーク達のほうへ走っていくのが見えた。


「・・・・・・」

コウは、その後ろ姿を少しの間だけ見つめる。そして、

(セレス・・・か。不思議な子だな・・・)

そんな事を思いながら、彼もマーク達のところへと走っていった。



こうして、コウ達は馬車を使ってグレナダへと戻った。

その道中、コウはセレスに森で訊けなかった事を訊こうとしたけれど。

セレスは街に着くまでの間、テティスに叱られた事でまだ落ち込んでいたのか。

ずっと黙ったまま口を開こうとせず、結局訊くことは出来なかった。



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